小説『止まりだしたら走らない』(品田遊,リトルモア,2015)読了。
やっぱり短編集が好き。[[MORE]]Twitterでこの本が出ることをだいぶ前に知ってて、すっかり忘れてたころに本屋で平積みになってるところを見かけて衝動買いした。買う前にさらっとページを開いたときの衝撃ときたら。だって色とフォントが違うページがある。挿絵が本文の途中に割り込んでたり、とにかく大胆な位置に入ってる。
こんなんで読みづらくないのかなと一瞬考えたけど杞憂だった。個人的にはすごく好き。導入はあまり関係なさそうな話をしているのに知らないうちにペースに引き込まれるし、地の文含めてテンポが良い。そのせいで、むしろまだ話が続きそうなところであっさり終わってしまう物足りなさを感じた。短編なのがもったいない! でも描かれてる先が気になるところで終わるのは、だれかの日常の一部を切り取ってる感が出て生々しくていいのかもしれない。うーん。それと、例えなんかで頻繁に出てくる鮮やかな表現も的を得てて好きだな。error403さんの挿絵もかなり印象的。きれいでかわいいだけじゃなくてほんの少し後ろ暗い雰囲気や脆さがある。挿絵に人間が出てきてもほとんど表情が読み取れないのが多数の人間のうちの誰かって感じがしていいね。
あと、すべて独立した短編だと思ってたら青色の文字で書かれてる話は連作だった。目次もよく見ると上下でちゃんと連作とそうでない作品が分かれてる。こまやかなところまで仕掛けられてる装丁だ……見てて楽しいなあ。東京から高尾山へ向かう中での都築と新渡戸の二人の話題や見かけた人が後の短編で触れられてるのが電車に乗る人たちによって物語が動いてることをより実感させてる。「車内で楽しいものは食べちゃいけない」論には納得した。新渡戸はてっきり男だと思ってたから高尾山着いてから驚いたんだけど初めからそうだったっけ…?