『Even if TEMPEST 連なる刻の暁』クリア感想

『宵闇にかく語りき魔女』(感想)のファンディスク(DL専売)。

本編やっててもっと知りたい!このあとが気になる!と思ったところが全部盛りで大満足でした。主要キャラだけでなくネームドモブのその後と夢も叶えてて拍手喝采もの。今回は各ルートの甘さも十分あった。

今回推理パートはほとんどないので読み物に等しい。バッドになったとき直前の選択肢まで戻るようになってて嬉しい。

もはやオープニングとプロローグの楽しそうなアナスタシアだけでよかったね〜!が止まらなかった。各ルートのエピローグは彼視点なのも言わないけどアナスタシアのことをどう考えてるか分かってよかった。

各ルート感想

ルーシェン

彼との甘いところを一番待ってた。しょっぱなから、私情で会いたくていつも遅らせてたガルダの手続きを優先させていて高まった。二人がお互いに「この人には敵わないな……」と思っている部分があるのがかわいくて好き。守ってあげたい気持ちになるのに、二人きりになったとき嫉妬してみたり、ふつうにかっこよかったりするのがギャップで良かった。

王族が自分で料理するのもおかしな話だし下手でしょうがないよね。こういうギャグみたいな場面が『宵闇』には当然なかったから、平和だ……としみじみしてしまった。

気になってたところその1。さすがに継母と決着みたいな分かりやすい形ではなかったけど、リンゼル家と離れて生きていける感じになって本当によかった。オーラも今までのことがあるから素直になれないだけで、姉のことを大事に思ってることは伝わってきた。ルーシェンは渡せないけど幸せになってほしい。

父王の想像を絶する最悪な所業でまさかの別エンドを覚悟したけど回避できるものではなく、ルーシェンにも手段を選べなくなる側面はあるかもねって話だった。立場を差し引いても手にはかけないところがルーシェンらしいと思った。

クライオス

やっぱりわかりやすく乙女ゲー遊んでるなあ!という気持ちになれるいつもの色男。

病気が治ってからどうなったのか、意外と宵闇で知る機会がなかったから欲望に忠実になっててよかった。

アナスタシアは基本的に芯が固いから、クライオスからの無限の愛で調子を狂わされてるのがかわいい。でもラブラブなだけじゃなくて死に戻りを経て「クライオスに逆らえない」って思いが芽生えてたのが良かった。黒ルート怖かったもんね。

知らない他の自分に嫉妬しつつも、戦いを終えてまだ吹っ切れられないアナスタシアと再会した体で抱きしめるシーンが、救われた感じがしていちばん好き。

モナハンとのやり取りが一番意外だったかも。クライオスのことを嫌ってる理由が思ってたのと違った。なんかもっと小物だと思ってた。ちゃんと偉いなりのものはあったんだ(失礼)。権力に弱くて調子に乗りやすいだけで性格まで悪いわけではなかった。

ティレル

やっぱりこの人が一番好きだな。めちゃくちゃ頭いいくせに好きな人のこととなると喜ばせ方が分からないのかわいいよ。別の自分の気持ちや行動も理解できて、その時の傷も含めて俺のものって考えられるのは漢でしかない。猟犬の仕事から解放されたがゆえの弱いところが見られてうれしかった。二人は騎士と文官で考え方は真逆な感じなのに、どうしても過去に囚われがちで、他人に尽くすばっかりで、お互いを戦いから遠ざけたい似たもの同士って関係性がとても好き。マヤのことも含めて大事にしたいという姿勢を明確にしてたのも律儀で好き。ティレルにはないものだからかもしれないけど。

気になってたところその2。コンラッドにちゃんと罪を償わせることができてよかった。自身もどうしてあんな感じなのかほんのり掘り下げがあって憎みがいがある。いっそエヴェリーナと同じ病気とでも言われたほうが楽だったかもしれないけど。

唯一探索と(司法)裁判パートがあって楽しかった。ちょっとヒントがぶん投げすぎだとは思うけど何回でもやり直しさせてくれて助かった。正攻法で行かずに抜け穴をさがすところがやっぱりティレル様なんですよ。

ゼン

読んだあとThe Fellowship を読むまで、「他のルートじゃ呪い解けないじゃん……」と落ち込んでしまった。
宵闇しかり、悲しいかな個人的には恋人としていまいち見られないのに、なんなんだろうこの人。

今のゼンとともに生きるには人間の理から離れる必要がある。親交が続いててよかったけどそれも長く続けられないという葛藤。いつでも冷静な彼がアナスタシアとの今後を思って焦る姿はとても愛おしい。
優しくて一歩引ける性格だからこそ自分が結ばれないところでもすべてを知ってることが重荷になってる描写がつらくて好き。

もとから思い通りの管理者だったんじゃなくて、呪いがそうさせたんだって神に物申して、辛くても人間として生き続けたいと啖呵を切るアナスタシアは最高にかっこよかった。同じようにすべてを覚えていてもなお、彼女がブレずにはっきりものを言うからゼンも安心していられるんだと思う。

気になってたことその3。女神の力まわりのことやゼンの呪いの理由、なんなら宵闇で起こったことのすべてが全部計画されてたのが分かってよかった。

正直、迷宮でお父様が出てきたときにスケールが急激に広がりすぎて虚無感はあった。クロムが管理を任された数ある地球のうちのひとつという説得力にはなるけど、他3人のルートからは醒める要因にしかなってないと思ってしまう。まあ女神の力が残るのはゼンを選んだ時だけだし、世界を俯瞰で見られる特別編としては面白いから味変として楽しむのが一番いいのかな。どうしても世界観の比重が私の中で大きくなってしまって入り込みきれない。

The Fellowship

ストアの説明をまったく読んでおらず、クロムの四股の話から始まったからまじで逆ハーレムルートかと思ってひやひやした。彼女が好意に答えてるわけではないので逆ハーとは違う……と思う。
誰のルートにも入らないときにゼンの呪い問題を解決してくれて本当によかった。誰を選んでもなんとかなるだろうと思わせてくれてありがとう。

ここだけの話、ルートじゃないときのクライオスが好き。友人相手にはさっぱりしてて生粋の女好きなんだな……と思う。だからこそルートのときの激重感情が映える。一粒で二度おいしい。
アナスタシアはみんなのこと同じくらい大事に思ってるけど、4人ともアナスタシア第一でモーションかけながら大騒ぎしてるのが新鮮で面白かった。ティレルが積極的に攻めていたのは意外だった。クライオスが立場的にも優位で隙あらばそばに置こうとするから当然なのかもしれないけど。

ちょっと改心したイシュがここぞというときに助けてくれて沸いた。今のポジションだから輝いてるキャラだと思うから、攻略対象になってほしいとまでは言わないけど、負けた後どんな変化があったのかは知りたかった(気になってたことその4)。相変わらず素直じゃなくて面白い。

各ルートのあとだから、少しずつ大事なところをかいつまんで匂わせしてるのもあって、全部盛りで満足度の高い話だった。

サイドストーリー感想

  • マヤ
    いてくれるだけで十分支えになっていたのに、一緒に戦いたいと思ってたのが良すぎる。そりゃ男たちに嫉妬もする。
    夢に別の回の記憶が出てくるってことは、アカシックレコードにあることは思い出す可能性もちょっとあるのかなと思った。攻略対象の人たちが受け入れられるのもうっすら感じ取ってるからかも。
  • エヴェリーナ
    レティシアへの重い愛情。どうしてそこまでアナスタシアを憎むのかが気になってた(その5)から腑に落ちた。レティシアはなんとなくクロムみたいな人なんだろうなと思う。
  • コンラッド
    死に戻りのことがバレてるから逃げられなさそうな絶望感がやばい。周回中のことだとしたらそりゃ終わっても許せないよね。仮に愛情を持てたとしても、苦しめるための踏み台にしかならなそうなところがとことん悪くて良い。
  • イシュ
    神話を実体験として語られると重みが違う。1000年経ってようやくカラリスに一泡吹かせてやれてよかった。ここまでクロムが神様らしくない、明るい普通の女の子みたいなイメージだったので、人間と違う規格の部分が垣間見れてうれしい。
    イシュが生まれたのは、人間的な部分が女神と一つになりきれずに残った結果みたいな感じなのかなと思った。
    名前の由来がルキウスの姓だったの悲しい。でも、裏切られたあともずっと名前を捨てなかったってことはやっぱり人間を信じたいのかな。人間に恐怖を感じるところのスチルが宵闇の死後アナスタシアの対になってたのが良い。

攻略できる4人が、誰を選んでも必ずアナスタシアの特別と思えるのがこの作品の良いところだと改めて思った。
ファンタジーものでなんなら女神の力すら使ってきた人たちだけど、人間の強さを信じたいって思いがずっと変わらなくて、この人たちなら本当にやってくれそうだなと思えるところが大好きです。