『A Space For the Unbound 心に咲く花』クリア感想

1990年代のインドネシアが舞台のSF青春アドベンチャー。
ドット絵調のグラフィックや世界観が好みなら合うと思うので、ストアのPVだけ確認してネタバレを読む前にさくっと遊んでほしい。思いがけずネコゲーだった。

ゲームシステム

街でアイテムを集めて、魔法で人の心に潜り込んでちょっとした仕掛けを解き、問題を解決していくゲーム。操作方法の説明が丁寧で翻訳もよい。オートセーブあり。

コマンド入力などのミニゲームはたくさんミスしてもすぐにリトライさせてくれるからストレスがない。
フューチャー・ファイターのハイスコア挑戦だけはミスできなくてちょっとドキドキした。
街も小さいし、別のエリアに入るとき以外は横移動しかないから、迷子になりにくいのも方向音痴にはありがたい。
収集要素のある場所に戻れなくなる直前になると、強めに先に進むかどうか訊いてくれる安心設計。

強いて言えば、通知は操作できるようになってから表示してほしい感じがした。
あと、序盤に自動で話し始めるキャラクターがいるところで寄り道すると操作が効かなくなるバグがあるっぽい(switch版 v1.0.14.0)。エリアを切替えたときにオートセーブが入ってるみたいだからそこまで気にならないけど。

音楽も良かった。街でエリア移動するとメロディそのままでアレンジが変わるのが良い。
フューチャー・ファイターの曲が好きです

ストーリーについて ※ネタバレを含みます

青さと甘酸っぱさがありながらも違和感のある部分が徐々に埋まっていく感じが気持ちよかった。
世界が終わりそうになっても野良ネコに名前をつけて愛でられる。かわいい。


スペースダイヴした人を根本から塗り変えるのではなく、内側にあるものに気づかせて背中を押すのが優しくて好き。

発売前の情報から想像してたよりずっと重いテーマの話だった。タイトル前の注意書きに違わず。罵倒されたり場に馴染めなかったりという場面が結構出てくるから、まったく元気がないときはやめておいたほうがいいのかもしれない。でも主人公含め町の人が基本的にいい人で茶目っ気にあふれてるし画面も明るいから、そこまで重くなりすぎなくてよかった。
マリンとのやりとりが特に悲しい。子どもの頃って自分と他人のおかれた環境が違うって気づけなくて無邪気に傷つけちゃうことってたくさんあるよね。


最後まで遊んだら逆に、どこからがラヤの作ったものなのかわからなくなってしまった。
本人に都合のいいように世界が歪められてると言いながら、状況を知ったうえでアトマを逃したり導いたりしていたネコたちは、ラヤの本心にある冷静な部分なのかも。
ラヤは基本的に自分を守りたかっただけで、アトマのことを傷つけたくなかったから強引にスペースから追い出して忠告していたと。

アトマの存在だけはちょっと謎が残った。もしかしてやることリストコンプリートしたら真エンドあるのかな!?
「私には作れない」と言っていたから実在はしたと思うけど、「本物とは違う」ってアトマ自身が言ってたから記憶の断片から生まれた理想の共作者であることは間違いなさそう。
だけど溺れたのが実際にあったことだとマリンの言ってたことと矛盾するし、あの小さな町で名前を聞いてもだれも知らないのもちょっと無理があるし。
1周クリアしてからあれこれ考えた結果、嵐が来て川で溺れたこと自体がラヤの心の限界を示してたのでは? という考えに落ち着いた。

最後のスペースダイヴで、何度追い払っても戻ってくるのはなぜかと訊かれて「記憶はしつこいから」って返すところがとても好き。しつこいのは大体ネガティブな記憶が多いけど、どんなときでも小さな幸せに気付かせてくれるのがアトマなんだよね。物書きらしいすてきな表現。

収集要素をコンプできなかったのが心残り。
動物のこり2匹と、ガムのMとRとN、グッとくる曲のスペースダイヴがまじで分からなかった。あと沼地の自転車の使い道。
牛にキッパリ拒絶されたのが悲しかったので、2周目でやることリストと物語をコンプリートして存分にモフらせてもらおう。