『イヌワシ〜うらぶれ探偵とお嬢様刑事の池袋事件ファイル〜』クリア感想

刑事ドラマ系テキストアドベンチャー。元は終了済のスマホゲーらしい。

買ってから脇目も振らず本編を読み切ってしまった。バディもの好きにはたまらない話だった。
1話のあいだに挟まる選択肢とミニゲームで成功すると星がもらえて、その話の最後に星の数でささやかなエンド分岐があるテキストアドベンチャー。
やさしい難易度なので気乗りしなくてもだらだら読めるし、ひとつの章が短いからちょっとした時間に読もうかな~と思いやすかった。既読早送り・章選択・オート/任意セーブありでシステムもストレスなし。

相棒を亡くして落ちぶれた元刑事の探偵と、相棒の妹がタッグを組んで、彼の死の真相を突き止めるために奔走する話。

かなり序盤で主人公コンビが追うべき犯人が判明するので、怪しい人がいっぱい出てきて犯人は誰だ!?みたいな考察系の楽しさではない。
それぞれの事件の犯人を追う緊張感はあるので、刑事もので押してほしいツボはちゃんと押された。

事件解決するときにお互いの動きを分かってて犯人を追い詰めていくのが本当に熱くてかっこいい。

イヌワシ二人の相棒としての信頼関係もさることながら、捜査を通じて周りのキャラが密かに抱いていた感情が表に出てきて、上手く片を付けてるのが良かった。
最終話まで見てから改めて考えると、各人の抱える感情と向き合うことがテーマだったのかな。
そこに鷲宮の特殊能力も関係しているのがとても良い。
最初に大きな流れの犯人が分かってるのはそっちに時間割くためかもしれない。

どの話も好きだけど、強いてあげるとすれば3話が好き。狗神・龍谷寺と美馬・鷹岡が重なる感じがたまらん。それでいて美馬がイヌワシに協力する理由が乗っかってきたり、特殊能力の新しい可能性が示されたりと、一番わくわくした話だった。

たまーに本筋には関係ないサービススチルがあるのも良かった。選択制だから興味なければ飛ばせるようにもなっている。私は全部見た。狐塚の制服姿がほんと好き。

ちょっと気になったのは、鷲宮が特殊能力を使うために精神力を消耗する制約があるのに、捜査の手がかりを掴むのがまず超能力なとことか、いくら捜査のためだからって警察の情報がダダ漏れなのは職業倫理が気になるとか。
まあ刑事ドラマ自体ひとつのファンタジーだから、捕まえるまでが面白ければ細かいところは言うほど気にしてない。そもそも特殊能力がある世界だし。

ゲーム的な難点といえば、基本的に正解以外は選べないようになっているから、推理する面白さを期待すると肩透かしなところ。
ミニゲームのアクションパートもとい目押しがちょっとストレスで、毎回緊張した。
疲れてるときにやると評価が大変なことになる。

サブストーリーも基本は事件を追うことになるんだけど、正月やバレンタインやどこか遠出した先で何かが起こるイベントなので、普段見られない彼らの一面がみられておもしろかった。鷲宮が単なる相棒として以上に狗神のことを思ってるのはちょっと意外だった。サブのなかでは「パーティは血に濡れて」がコンビ感つよくて好き。

DLCは最終回の数年後にあの名コンビが帰ってきた――ってCMやりそうな2時間のスペシャルドラマっぽい雰囲気でした(好き)。
皆がさらに頼もしくなっていて、しばらく一緒にやってなくてもすぐ呼吸が合わせられる感じがとても安心した。頼もしすぎて全員が合流してきたときに「もう勝ったな……」と思ってしまった。

刑事ドラマ成分が足りないときにまた遊びたい一本でした。